ミクロ構造体の振動分光学(科研費)

2014年度 概要

 本研究では、特徴的なサイズが非常に小さな物体(ミクロ構造体)の固有振動数を散乱されたレーザー光の周波数シフトにもとづいて計測すること、またさまざまなミクロ構造体の固有振動数の体系化を目指している。本年度は固体表面上に滴下された液滴の振動の測定と固有振動数の解析に取り組んだ。用いた液滴のサイズはミリメートルからサブミリメートルであり、単一の液滴を測定対象とした。振動している物体によって散乱されたレーザー光の周波数は、物体の振動の振動数だけシフトすることを利用し、散乱前後での光の周波数の差を測定することにより、物体の振動数を得ることができた。  

 直径数mmから1 mm弱までのさまざまなサイズの水滴を空気中およびn-デカン中のガラス基板上に滴下し、得られた水滴に瞬間的に力を加えることで加振し、振動数を測定した。得られた振動数は振動の励起の方法に依存しなかったため、固有振動数が得られたと考えられる。また、第2、第3の周波数ピークが見られ、高調波も測定できた。水滴の振動が界面張力を復元力とする波(界面張力波)によって記述されると仮定すると、振動が共振状態になるためには水滴の円弧を伝播する界面張力波が境界条件によって束縛された定在波になる必要がある。測定により得られた固有振動数の結果は、円弧の端で適当な境界条件を設定することで説明できたが、空気中とn-デカン中の水滴では異なる境界条件を課す必要があることがわかった。  

 以上、本年度はミリメートル程度の大きさの物体について、その固有振動数を散乱レーザー光の周波数シフトにより求める方法を確立し、空気中および油相中の水滴について、固有振動数と物体の性質との関係を考察することが可能であることを示した。

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