イオン液体の界面における構造およびそのダイナミクス

イオン液体(カチオンとアニオンのみからなり常温で液体の塩)は、

  1. 蒸気圧が無視できるほど小さい
  2. 熱的・化学的に安定
  3. 難燃性
  4. イオン伝導性がある
  5. 水や有機溶媒などの分子性溶媒とは異なる溶媒和環境を提供する
などの特長を持つことから様々な分野での利用が期待されています。

私たちは、 特にこの新規材料の界面に注目し、電気化学および界面分光学を中心にした独自の視点から、研究を進めています。界面に存在する分子数はバルク(相のおきあい)に存在する分子数に比べて圧倒的に少ないため、界面における分子構造に関する情報を選択的に得るには特殊な実験手法を用いる必要があります。私たちは界面選択的な複数の分光法(X線反射率法、分光エリプソメトリー、表面プラズモン共鳴法、中性子反射率法、表面増強赤外分光法)を駆使して、イオン液体の界面構造およびそのダイナミクスの解明に取り組んでいます。例えば、X線反射率法によりイオン液体がその自由表面で自発的に多層構造を形成することを見出しています。 これは分子性溶媒には見られない構造です。また、このイオン多層構造において界面電位差の変化に対するイオンの再配列が異常に遅いことを見出しています。そのイオン再配列に要する時間を、表面プラズモン共鳴法を用いて測定しています。

上の写真は、上から順に水、油、イオン液体の三相系。 三相とも本来は無色ですが、そのままだと写真写りが良くないので、それぞれの相にのみ溶解する色素で色を付けました。 (一番上が赤く見えるのは光の反射によるもので、イオン液体が浮いているのではありません。 なぜ黄色でなく赤なのか。明度の問題か…反射係数の波長依存性の問題か…) 講演などで、「液体で赤・黄・青の信号を作りましたよ!」というと、みなさん(ほんの少しだけ)笑ってくれます。 上の写真で(マクロに)見えている、イオン液体のソフト界面・ハード界面の(ミクロの)構造とそのダイナミクスを研究しています。

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